トップページへ戻る

2010年02月07日

【藤子・F・不二雄[異色短編集]2】の感想3



【藤子・F・不二雄[異色短編集]2/小学館文庫】のレビュー。というか単なる感想。三回目。
『サンプルAとB』『休日のガンマン』『分岐点』『換身』。


○『サンプルAとB』

まったく文化や概念の違う知的生命体から見た、なにやら見覚えのある話。

これは話は藤子F氏ですが絵は別の女性漫画家さんが描いています。
宇宙人からみた地球を描いてるので、既成概念を取り除いた極端に科学的な分析がなされています。
元々誰でも知ってる有名な話をちょっと変わった視点から見てみようという作品です。


○『休日のガンマン』

Mr.ジェシィ・ジェイムズは西部開拓時代の凄腕ガンマン。今日も血と硝煙の匂いを漂わせ、決闘に赴くアウトロー。
…のはずだが、手巻き煙草もうまく巻けない、銃を抜くのにもモタつく。何かおかしい…?

※反転
擬似西部劇。アウトローを気取るのもなかなか上手くいかないもんですねぇ。
ガチガチの法治国家、管理社会に住む者がアウトローに憧れる(本当になりたいわけではない)気持ちは分かる気がします。
金を払って犯罪を行える。擬似殺人も、擬似処刑(される方)も体験できる。
こういう施設があったら面白そうですね。絶対認可されないだろうけれど。


○『分岐点』

主人公の茂手木は、大いなる選択を迫られた過去を持つ。
紅子と美津江、この二人の女性のどちらかを選ばなければならなかったのだ。
茂手木は美津江を選び、結婚した。
しかし今はその美津江との夫婦仲も冷めきっていた。
茂手木はある日、『やりなおしコンサルタント』と名乗る人物に出会う。

※反転
選択肢があっても、その中に正解が必ずあるとは限らない。
なんだかこれは主人公の息子が可哀想だったなぁ。
というか娘のまゆみ、しずかちゃんに見え(略)


○『換身』

よくある魂入れかわりネタのドタバタコメディ。
主人公の海野五郎が入れかわったのは、なんと極道の親分!

※反転
ブッサイクな組長のおっさんになってしまったみどりちゃん。
「五郎さんそれでも結婚してくださる?」の問いに「あったりまえじゃんか」と即答する主人公に感動した。
あの状況でこう言える奴は滅多にいないと思う。

しかしこれオチはこれでいいのか。(笑)
まぁ本人達が納得してるなら何も言いません。お幸せに。



【藤子・F・不二雄[異色短編集]2】の感想4へ続く。




【藤子・F・不二雄[異色短編集]2】の感想2



【藤子・F・不二雄[異色短編集]2/小学館文庫】のレビュー。というか単なる感想。二回目。
『幸運児』『やすらぎの館』『定年退食』。


○『幸運児』

とある産婦人科病院で産まれた1人の赤ん坊。
しかしその母親は暗い顔をしていた。
彼氏には逃げられ、所持金も底を尽き、多摩川の土手で苦しんでいる所を病院に担ぎ込まれたのだった。

『うすぎたない』という言葉はよく使われるが『うすぎれい』という言葉を目にしたのは初めてだ。
というか病院でこんなイベントも珍しかろう。(笑)


○『やすらぎの館』

競争社会を生き抜く大企業の社長、身内ですら信用出来ない、そんな毎日を送る主人公の男性に、友人は『やすらぎの館』に行くようにすすめる。
主人公は不可解に思いながらも足を運ぶが、その『やすらぎの館』は椅子などの家具や小物に至るまで全てが普通よりも大きく作られているという奇妙な空間だった。

藤子A氏がこれと同じテーマで描いておられた覚えがあります。
やはり多くの人がはりつめた日常の中で安らぎを求めているのでしょうか。

「ガキ大将の暴力は、受ける子供にとっては遊びの感覚とは程遠い死の恐怖さえ感じさせるものだ」

暴力的で自分至上主義なことをジャイアニズムと言ったりする。
「さからうものは死けい!」などと子供とは思えない暴君的発言をするジャイアン。
子供向け漫画の友達キャラでここまで暴力的なのは珍しいな、と思っていたが
『やすらぎの館』を読んで、藤子F氏の子供観の一部を見た気がした。
"死の恐怖さえ感じさせる"ほど暴力的な子供というのは珍しいのではないと。
子供漫画的には不似合いだと思ったジャイアンだが、
作者は子供達を美化するのではなく、ありのまま描こうしたのだろう。

しかしこれは、時代が関係している気がするんだよな。
『やすらぎの館』が発表されたのは1974年。で、おっさんの子供時代だから、戦後あたり?
今は結構メディアの暴力規制とかあったりしてなにかと暴力に関してはうるさいと思うんですよね。
こういうジャイアン的なガキ大将ってあまりいそうにない気もする。
その代わりイジメが陰湿になっているかもしれないが。


○『定年退食』

未曾有の食糧危機。60歳から75歳までを二次定年と定め、配給を規制するという『定員法』が施行されていた。
定年間近の主人公は、二次定年特別延長を申請していたのだが、僅かな枠しか無く抽選による当選確率は天文学的な倍率であった。
主人公の友人である吹山は、主人公に必ず抽選に当たる方法があると持ちかけてきた。賄賂によって延長枠が横流しされているのだというのだ。

いやー、もう。この話はショッキングでした。
これを初めて読んだ時はその日一日中になったもんです。

※反転
定員法改正の審議の噂ってのは正しかったがこんな酷い改正だとは夢にも思わなかっただろうな吹山。
「早く死んで下さい」と言っているようなものだ。存在否定だよ。完全な。
老齢人口だってそれまでは国を支えてきたはずなんですが。
未曾有の食料危機ですか。別の短編の『間引き』と同じ世界観ですね。
虚無感溢れるラストとなっている。
こんな悲しい笑顔を見たのは初めてだ。



【藤子・F・不二雄[異色短編集]2】の感想3へ続く。




2010年02月05日

【藤子・F・不二雄[異色短編集]2】の感想1



【藤子・F・不二雄[異色短編集]2/小学館文庫】のレビュー。というか単なる感想。
『ミラクルマン』『大予言』『老雄大いに語る』『光陰』。


○『ミラクルマン』

木関は平凡なサラリーマン、のはずだった。
ある雨の夜、友人の郷里が事故で死んだ課長の葬式の帰りに、
ふさぎこんでる木関を心配して家に訪れる。
深刻な顔をして木関がこう告白する。
「課長を殺したのは俺なんだよ」と。

※反転
なんというか、よくある妄想のような話。
ある偶然をきっかけに『自分は特別なのではないか』と考え、身の回りの偶然をその考えに結びつけ、その思いを強くする。
誇大妄想のようなものは病的なものじゃなくても一般的に結構あるんじゃないかと思う。
しかしこれ、廊下ですれちがって挨拶するのが精一杯って程度の交流しかなかった同僚の女性にいきなりダイヤの指輪をプレゼントするのもどうかと思うよ。

天使がやたらフランクな口調で神様に話しかけてるのに笑った。軽いな。(笑)


○『大予言』

主人公はオカルトがかったパフォーマンスで客を楽しませる予言者のノストルタンマ。
昔タロット占いで有名になった田呂都先生の家を久しぶりに訪ねるのだという。
田呂都先生は四、五年前からノイローゼにかかっていて、どうも何やら理由があるらしい。

どうでもいいがノストルタンマという名前は酷いだろ。(笑)
タロット占い師の田呂都先生。名前で遊んでますなぁ。


○『老雄大いに語る』

数年規模の宇宙探査計画。その宇宙船に搭乗するパイロットは、なんと宇宙局長、その人だった。
なぜ宇宙局長自らがパイロットを? それにはある事情があった。

あー、こういうおばちゃんいるよなー。
ちょっとフフッと笑えるような軽いジョークの話です。


○『光陰』

年を取ると時の流れがやたら早く感じるよね、という話。

たしかにそうです。この現象についてやはりいろいろ議論されていて、仮説があるようです。
過去に得た経験が多い大人と、少ない大人では、『未知のもの』の数があまりにも違う。
『未知のもの』が多い者は、新しく知った知識や経験を、感動などの感情を伴い鮮烈に記憶、学習する。
それによりインパクトを受ける数が多い子供は、経験から物事を推測出来たり既知のものが多くインパクトを感じる事が少ない大人より、密度の濃い時を過ごしていると感じ、時間の流れをゆっくりに感じるのだそうだ。『新たに経験する』事が多いから。
……ってどっかの本で読みました。

「つまりさ、こういうことだ。現体験中の時間は常に過去の時間の総和と比較されるから……」

って、よくまぁそんな短い文章で説明できるなぁ。
物事を言葉で説明する場合、
なるべく短く、分かりやすく、専門用語や難解な言葉を使わない。
これらの条件が当てはまるものほど質の良い説明だと思っている。
そしてそれには文章力と頭の良さが必要だと思う。

藤子F氏ってやっぱ頭いいと思うっす。


【藤子・F・不二雄[異色短編集]2】の感想2に続く。