トップページへ戻る

2010年02月04日

【藤子・F・不二雄[異色短編集]1】の感想4



【藤子・F・不二雄[異色短編集]1/小学館文庫】のレビュー。というか単なる感想。四回目。
『ヒョンヒョロ』『わが子・スーパーマン』『コロリころげた木の根っ子』。


○『ヒョンヒョロ』

「あのねママ。円盤にのったうさぎちゃんがね、この手紙を……」
そう言って幼い子供が母親に差し出したのは、なんと脅迫状。
"ヒョンヒョロをください くださらないと 誘拐するてす マーちゃんどの"
脅迫状にはこう書かれてあった……へったクソな字で……。
犯人が要求してきた、ヒョンヒョロ? このヒョンヒョロって何? という話。

※反転
常識を超えた、受け入れがたい大ウサギの姿を幻覚として現実逃避する両親が笑える。
そうだよな、きっと自分もまず幻覚を疑って精神科で診てもらうと思う。

あれ、このオチ、ギャグマンガじゃなかった…の…か…?
そりゃまぁたしかに、宛名がマーちゃんになってるあたり、あれ? 子供は人質じゃないのか? じゃあ人質は誰だ? みたいな話になってしかるべきですよね。
しかし豪快な誘拐だなぁ。この子供、かわいそうに。消えた人たちは一体どうなったんだろう。


○『わが子・スーパーマン』

かわいいかわいい天使のような、幼い我が息子。しかしその息子に、どうやら、なにか秘密事があるようだ…。

※反転
『自分の子供が殺人犯だったら』なんて、恐い話だ。うへぇ。


○『コロリころげた木の根っ子』

ある雑誌の新人編集者の男が主人公。
作家の大和先生の所へ原稿を取りに行かされた。
大和先生はきさくな人間で、主人公にも親しく接してくれたが、その先生、外面は良いわりに自分の妻に対しては非常に暴君だった。

なかなか原稿にとりかからない先生となんとかして急かせる主人公がユーモラス。

※反転
この話好きっすわ。
心の闇を描いてるっすね。
最後のコマがまた恐い……。

殺意というのは目に見えるものとは限りませんなぁ。


【藤子・F・不二雄[異色短編集]2】の感想1に続く。






2010年02月03日

【藤子・F・不二雄[異色短編集]1】の感想3



【藤子・F・不二雄[異色短編集]1/小学館文庫】のレビュー。というか単なる感想。三回目。
『ドジ田ドジ郎の幸運』『T・Mは絶対に』『ミノタウロスの皿』『一千年後の再会』。


○『ドジ田ドジ郎の幸運』

とことんついてない男が主人公。
なんか劇的な不幸に見舞われてるというわけではなさそうだが、とにかく細かいところで運が悪い。
麻雀ではいつも振り込んでしまう、道路を渡ろうとするといつも赤信号に変わる、などなど。
そんな運の悪い主人公のもとに、偶然『宇宙合目的調整機構統計局均整課偶然係長のゴンスケ』と名乗る謎のロボット(?)が現れた。

既存にはない価値観や概念をパッと出すところがさすが。こーいうのが面白いんだ、また。
やはりSFはアイディアっすね。


○『T・Mは絶対に』

T(タイム)・M(マシン)。
タイムマシンを作って実用化するのは絶対に無理だ。何故なら……、という話。

SF作家にとってタイムトラベルというテーマはやはり大きいんだろうな。


○『ミノタウロスの皿』

宇宙の海で遭難してしまった宇宙船。主人公の男ひとりを残し、乗組員は全員死亡。
危機一髪だったが、偶然にも地球型の星に不時着することが出来た。
そこで主人公は、美しい少女ミノアと出会う。
ミノアは、その星の栄えある名誉『ミノタウロスの皿』に選ばれた少女であった。

既存の価値観を揺さぶる作品。これだからSFはいーんだよなぁ。
他の作風は結構乾いた感じだが、これは恋愛がからむせいか情熱的。

「善処されたし、健闘をいのる、健闘をいのる!」
クソの役にも立たない励ましの言葉に少し笑ってしまった。
善処されたしって言われてもなぁ。まぁそう言うしかないですが。

※反転
ミノアが皿に乗って運ばれていくシーンは圧巻です。
誇らしそうに満面の笑みを浮かべるミノアと、ミノアを死なせまいと必死の主人公の対比もいい。
最後のコマは皮肉も入ってますかね。

主人公の言うとおり、これは"残虐"なのだろうか?
誰も困っている者はいないようだが……。



○『一千年後の再会』

タイムマシン実験と宇宙観測計画によって引き離される男女。
いかにもSFらしい題材です。
これはちょっとだけ宇宙論についての知識が必要になるが、分かりやすく説明してくれてるので大丈夫。

基本的にどの作品も論理的で、SFってのはそういうもんだと思うが、この話は少し運命というものを感じる。
壮大な愛の物語。

しかしほんとシリアスの似合わない絵柄だなぁ。


【藤子・F・不二雄[異色短編集]1】の感想4に続く。




2010年02月02日

【藤子・F・不二雄[異色短編集]1】の感想2



【藤子・F・不二雄[異色短編集]1/小学館文庫】のレビュー。というか単なる感想。二回目。
『自分会議』『間引き』『劇画・オバQ』。


○『自分会議』

新しい部屋に引っ越してきた学生の主人公。
主人公はその部屋に奇妙な既視感を感じる。
主人公が子供のころに見た夢の部屋にそっくりだったのだ。
その夢について思案していた主人公の元に、いきなり「ぼくはきみだ」と名乗る謎のおっさんが現れて重大発言をする。

※反転
これは最後ゾッとした。まさかいきなりこうなるとは。最後のコマが凄いね。
これ、未来の自分たちがそれぞれ自己の立場で最も得をするようにと考えるので自分同士なのにこんな言い合いになってしまうんすね。

「けっきょく「自分は他人のはじまり」ということか……」
という主人公のセリフ、なんとなく哲学的。


○『3万3千平米』

マイホームを持つのは男の夢。そんな話。
家族を養う世帯主にとっては大きい問題ですね。


○『間引き』

地球総人口の増加により食糧不足に陥り、日本では配給制度が布かれている、そんな世界。
主人公はロッカーの管理人のおっさん。
近頃コインロッカーに赤ん坊を捨てるという事件が急増していた。
その現場を押さえて特ダネをつかもうという新聞記者が主人公のもとに訪れる。

新聞記者は語る。赤ん坊殺しは氷山の一角であり、近年人々の様々な『愛情』が急速に消えつつあると。
そしてそれにはある重大な理由があるのだと。

この『間引き』、短編集の中でも好きな話ですね。
相変わらずこの漫画的演出が凄い。

たしかに、このふたりが語っているように、命に対しての価値観、人々の情、そんなものの変わりようを考えたこともあった。
人命軽視は非常に感じるなぁ。死に対する恐れが希薄になっているのか、それとも個人のエゴが強くなっていっているのか。

『赤ん坊ロッカー』と『赤ちゃんポスト』。似ている気がしないでもない。


○『劇画・オバQ』

出た問題作。
テレビの雑学番組『トリビアの泉』でもこの漫画がネタになったそうですね。

あの有名な作品『オバケのQ太郎』を劇画タッチで描いたもの。
というか影を斜線でシャシャシャと描いてあったら劇画なのか頭身ギャグ漫画みたいですけど。
「この旗に集え、同志よ!」のコマは劇画じゃなく普段のタッチに戻ってるけどこっちの方が頭身高いぞ。(笑)

理想と現実の話だよなぁ。
子供のころオバQを見て夢を思い描いていた人はこれ見てショックを受けるかもしれない。
大人になるってこういう事なんだ。


【藤子・F・不二雄[異色短編集]1】の感想3に続く。